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思春期に刺激の多い環境で過ごすと脳の左右差と協調リズムが出現

【脳科学】思春期に刺激の多い環… 2013/04/05 23:51

【脳科学】思春期に刺激の多い環境で過ごすと脳の左右差と協調リズムが出現/理化学研究所
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1365063510/-100
1 :白夜φ ★:2013/04/04(木) 17:18:30.12 ID:???
2013年4月4日
独立行政法人理化学研究所
思春期に刺激の多い環境で過ごすと脳の左右差と協調リズムが出現
-ラットで左右にある海馬の脳波を同時計測、ガンマ波の大きな変化発見-

私たちの体は左右対称に見えますが、実は心臓が左側にあるなど左右非対称です。これは遺伝情報に基づくものです。
脳では、言語中枢が大脳の左半球にあるように、機能が左右非対称に分布していますが、左右非対称性を形成するメカニズムは不明でした。

これまでの研究で、刺激にあふれた豊かな環境で集団飼育された思春期のマウスやラットは、脳の左右にある海馬が担う空間記憶や学習能力が向上することが分かっていました。
そこで、理研の研究チームは、飼育環境の違いという外的要因で脳機能の左右の非対称性に影響が出るのかを調べるために、ラットの脳波を計測し、左右の海馬間の神経活動を探ってみました。

まず、生後3~6週目の思春期にあたるラットを1匹だけでケージで飼育する「隔離飼育群」と、遊具を入れたケージで6~8匹で集団飼育する「豊かな環境飼育群」に分け、左右の海馬の脳波を計測しました。
その結果、豊かな環境下のラットでは脳波のひとつのガンマ(γ)波の振幅が大きくなり、加えて右側のγ波の振幅が左側より大きくなっていることを発見しました。
さらに、豊かな環境下のラットは左右のγ波のリズムが同期することも分かりました。

また、豊かな環境飼育群のラットに対して、記憶や学習に深く関わる「シナプス可塑性(シナプスの情報伝達効率が長期的に変化する能力)」を左右するNMDA受容体の働きを抑制したところ、γ波の変化は起きませんでした。
実際に海馬の情報出力細胞のシナプスを観察すると、豊かな環境飼育群の右側のシナプス密度が左側に比べ、高くなっていました。
これによって、飼育環境の違いでシナプス数が変化し、神経回路の再編が左右非対称に起きていることが明らかになりました。

今後、どのような分子メカニズムで左右の機能の分別が生じたのかが解明されたら、ヒトなどの脳の左右形成メカニズムに迫ることができるかもしれません。
独立行政法人理化学研究所
脳科学総合研究センター 神経グリア回路研究チーム
チームリーダー 平瀬 肇 (ひらせ はじめ)

▽記事引用元 理化学研究所 60秒でわかるプレスリリース
http://www.riken.go.jp/pr/press/2013/20130404_1/digest/

プレスリリース 報道発表資料

http://www.riken.go.jp/pr/press/2013/20130404_1/

報道発表資料

2013年4月4日
独立行政法人理化学研究所
思春期に刺激の多い環境で過ごすと脳の左右差と協調リズムが出現
-ラットで左右にある海馬の脳波を同時計測、ガンマ波の大きな変化発見-
ポイント
隔離飼育ラットと豊かな環境飼育ラットで海馬の脳波(ガンマ波)活動を比較
豊かな方では右側の海馬でシナプスが増加し、ガンマ波が増強
脳の左右差形成の仕組みを解明する手掛かりと期待
要旨
理化学研究所(野依良治理事長)は、ラットを使った実験で、刺激に富む環境で飼育すると脳の海馬の左右間に発達の差が出ることを発見しました。こ の発見は、飼育環境の違いという外的因子により、脳機能の左右非対称性が促進されることを示します。これは、理研脳科学総合研究センター(利根川進セン ター長)神経グリア回路研究チームの篠原良章研究員、細谷亜季テクニカルスタッフ、平瀬肇チームリーダーによる成果です。
大脳の内側に位置する海馬[1]は、 空間学習や認知に関わっており、記憶の形成に重要な働きをしている部位です。この海馬を損傷すると、新しい物事を覚えられなくなる順行性健忘を発症するな ど重篤な記憶障害が生じます。これまでの研究で、思春期にあたる生後3週~6週のマウスやラットを遊具付のケージで集団飼育すると、空間記憶などの学習能 が向上することが知られていました。これは、遊具による視覚や体性感覚、および集団による社会性の刺激が海馬機能に影響していることを示しています。しか し、具体的に海馬の神経活動にどのような変化が生じているかは十分に分かっていませんでした。また、海馬は脳の左右に一対存在しますが、神経活動を左右の 海馬で同時に計測した実験は少なく、飼育環境の違いによる左右の海馬の神経活動変化については未解明でした。
今回、研究チームは生後3週~6週目のラットを1匹だけでケージで飼育する「隔離飼育群」と、遊具を入れたケージで集団飼育する「豊かな環境飼育群」とに分け、左右の海馬CA1領域[2]の脳波活動を計測しました。その結果、豊かな環境飼育群では、脳波の1つであるガンマ(γ)波[3]の振幅が大きくなり、なかでも右側のγ波の振幅が左側に比べてより大きくなっていることを発見しました。さらに、豊かな環境下のラットは左右のγ波のリズムが同期することも明らかになりました。また、豊かな環境飼育群で、シナプス入力の一端を担うNMDA受容体[4]の 働きを抑制すると、このようなγ波の変化は起こりませんでした。NMDA受容体は記憶や学習に関わり、特に脳が学習するときの本質であるシナプスの可塑性 に重要な働きをすることが知られています。したがって、豊かな環境飼育群ではシナプスの可塑性が起きて顕著なγ波の変化が出現することが示唆されました。 そこで、実際に海馬CA1領域のシナプス形態を調べてみた結果、豊かな環境飼育群の右側のシナプス密度が左側に比べ明らかに高くなっていました。これによ り、飼育環境の違いでシナプスが増えることで神経回路の再編が左右非対称に起きることが確認できました。
今回の発見は、海馬が霊長類で急速に進化した大脳新皮質の原型であることから、ヒトの脳が左側だけに言語野を持つなどの機能的左右差形成の仕組みを 解明する手掛かりになると期待できます。本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C,新学術領域研究「メゾスコピック神経回路から探る 脳の情報処理基盤」)の支援を受けて行われました。本成果は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(4月3日付け:日本時間4月4日)に掲載されます。
背景
乳幼児期や思春期の経験は将来の人格形成に大きな影響をもたらします。成長過程での経験がその後の行動や学習能力にどのように反映されるかは、脳 神経科学や心理学などの分野で注目されている課題であり、さまざまな動物や手法で研究が進められています。例えば、思春期にあたる生後3週~6週間目のマ ウスやラットを遊具付のケージで集団飼育すると、空間記憶などの学習能が向上することが知られています(図1)。 これは、遊具による視覚・体性感覚および集団飼育による社会性の刺激による「豊かな環境」が脳に影響していると考えられ、神経回路に物理的な変化が起きる ことが過去の研究から分かっています。中でも、大脳新皮質の内側に位置する海馬では神経細胞の新生が活発になり、神経細胞の形態がより複雑になるなど、大 きな構造変化が起きることが知られています。海馬は、記憶形成に重要な働きをしているため、多くの神経科学者が研究していますが、飼育環境が海馬の神経活 動に及ぼす影響はよく分かっていませんでした。また、海馬は脳の左右に一対存在しますが、左右の海馬の神経活動を同時に計測した実験は少なく、飼育環境の 違いによる左右の海馬間の活動変化については全く未知のままでした。
脳の情報伝達は、神経細胞集団がある特定のリズムをもって同期して活動することにより実現されると考えられています。このような集団的神経細胞の活動は、脳波(電位変化)として検出されます。海馬の脳波活動は、θ(シータ)波(8~12Hz)出現時と非出現時の2つの状態に大別されます。θ波は意識的な運動時やレム睡眠中に出現し、休息時や徐波睡眠時には消失します。しかし、麻酔によって眠っている時はθ波は発生し、θ波出現時と非出現時が自然に入れ替わる脳波状態になります。
θ波が発生するとき、海馬の一部であるCA1錐体細胞[5]の尖端樹状突起[5]が伸びた先にある放線状層と網状分子層では、γ(ガンマ)波(30~100Hz)と呼ばれる別の脳波がθ波と同時に出現します(図2)。このγ波は、一般的に知覚活動時に顕著に出現することが知られています。そこで、研究チームは、知覚活動に深く関連するγ波に着目し、飼育環境と海馬の神経活動の関連性を調べました。
研究手法と成果
研究チームは、思春期のラットを1匹だけでケージで飼育する「隔離飼育群」と遊具を入れたケージで6~8匹を集団飼育する「豊かな環境飼育 群」に分け、約4週間それぞれの環境で飼育しました。その後、感覚入力を遮断し、外界刺激に依存しない海馬固有のリズムを観察するために、覚醒の状態と似 た脳波が出現するような麻酔をラットに施しました。
θ波発生時中のCA1領域の放線状層のγ波を解析したところ、豊かな環境飼育群のγ波の振幅が隔離飼育群に比べて大きくなり、左右間のリズムが同期する現象を発見しました。さらに、左右のγ波を比較すると、右側の振幅がより大きくなっていることが明らかになりました(図3)。つまり、左右の海馬にある神経細胞は協調しながらも右側の神経細胞の活動を強くし、右側を優位にするように脳機能の左右非対称性を促進することが分かりました。
次に、学習に重要なシナプス可塑性[6]が この現象に関与しているかを調べました。シナプス可塑性に関わるNMDA受容体の働きを慢性的に減衰させるために、ラットにNMDA受容体阻害剤のケタミ ンを飲み水に入れて飲ませて豊かな環境下で飼育しました。すると、豊かな環境で飼育したにもかかわらず、γ波の振幅は増強されませんでした。つまり、豊か な環境による刺激によって、神経細胞のシナプス可塑性が起こり、顕著なγ波が出現することが示唆されました。そこで、豊かな環境飼育群の海馬CA1領域に あるシナプスを電子顕微鏡で観察したところ、右脳側のシナプス密度が高くなっていることが分かり、飼育環境の違いにより左右非対称に神経回路の再編が起き ていることが確認できました。また、別の実験で、飼育環境による脳波変化は短期間では起こらず、3週間以上の豊かな環境での慢性的な経験が必要であること も分かりました。
今後の期待
私たちの体は心臓が左側に位置するなど左右非対称です。このような非対称性は、発生の段階で初期胚にある細胞の繊毛の回転運動性に依存する ことが知られており、ゲノムに記録されている遺伝情報に基づいているといえます。霊長類、特にヒトでは、言語中枢が大脳左半球に局在するなど脳機能が左右 非対称に分布しています。一説には左右で機能を分業する方が、脳の情報処理効率を上げるのに適しているため、そのように進化したと考えられています。
今回の実験では、飼育環境の違いという外的因子により、脳機能の左右非対称性が促進されることが示されました。海馬は、霊長類で急速に進化した大脳新皮質の原型であることから、一連の発見はヒト脳の機能的左右差形成の仕組みを解明する手掛かりとなることが期待できます。
また、豊かな環境群では、左右海馬でのγ波の同期が観測されました。γ波が脳の違った領域で同期するとき、その領域間で情報の統合が行われていることを意 味します。つまり、左右の海馬はお互いに連携しながら左右が別々の働きを持つように機能を特化させていったと考えられます。
今後、どのような分子メカニズムで左右の機能の分別が生じたのかが明らかになれば、ヒトなどの脳の左右形成メカニズムに迫ることができるかもしれません。
原論文情報
Yoshiaki Shinohara, Aki Hosoya, and Hajime Hirase
"Experience enhances gamma oscillations and interhemispheric asymmetry in the hippocampus", Nature Communications, March or April 2013 doi 10.1038/ncomms2658
発表者
独立行政法人理化学研究所
脳科学総合研究センター 神経グリア回路研究チーム
チームリーダー 平瀬 肇 (ひらせ はじめ)
お問い合わせ先
脳科学研究推進室
Tel: 048-467-9757 / Fax: 048-462-4914
報道担当
独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel:048-467-9272 / Fax:048-462-4715
産業利用に関するお問い合わせ
独立行政法人理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
補足説明
1.海馬
大脳辺縁系の一部でヒトでは大脳側頭葉の内下部にある部位。長期記憶の形成や空間学習に重要な役割を果た している。湾曲した細長い構造がタツノオトシゴ(ラテン語:hippocampus - 英語:sea horse)に似ていることから海馬と名付けられた。特徴的な層構造をした細長い形をしており、CA1、CA2、CA3、歯状回の各部位からなる。大脳皮 質からの情報は歯状回を介してCA3へ伝達される経路と、海馬へ直接投射される経路が存在する。
note1.jpg
2.CA1領域
CA3からの入力を受け、海馬がつかさどる情報処理の出力を担う部位。CA1領域の構造は、5層に区分され、外 側から順に白板・上昇層・錐体細胞層・放線状層・網状分子層と呼ばれている。このうち、CA1の上昇層と放線状層はCA3の錐体細胞からシナプス入力を受 ける。今回の研究では、CA1領域中でもガンマ波が観測しやすい放射状層と網状分子層に主に注目して実験を行った。
3.ガンマ(γ)波
脳波は神経細胞の集団活動を反映すると考えられており、周波数によりδ(デルタ)波(0.5~4 Hz)、θ(シー タ)波(4~8 Hz)、α(アルファ)波(8~12 Hz)、β(ベータ)波(12~30 Hz)、γ(ガンマ)波(30Hz以上)に分類される。なかでも、γ波は意識と深い関わりがあり、知覚した情報を統合するために必要だと考えられている。 例えば、私たちが物を見た時、その情報は後頭部の一次視覚野でいったん処理された後、物体の色、動き、形などに分けて大脳の別々の部位がさらなる情報処理 を担当する。この際、情報処理を行っている大脳の各部位のγ波が同期することで、知覚された情報を統合していると考えられている。γ波が脳の情報処理に重 要である証拠に、知覚や行動に大きな影響を及ぼす精神疾患のひとつである統合失調症の患者では、γ波の発生に異常が生じることが分かっており、健常者では 音を聴かせた後にγ波が誘発されるが、統合失調症の患者ではこのγ波上昇が起こらない。
4.NMDA受容体
グルタミン酸受容体の一種。グルタミン酸と結合して、カルシウムやカリウムなどの陽イオンを透過させるイオン チャンネル共役型受容体である。海馬や大脳皮質の錐体細胞の興奮性シナプスに存在する。NMDA受容体を介するカルシウムイオンの流入は、シナプス可塑性 を誘起する必須条件であり、記憶や学習に深く関わる。
錐体細胞、尖端樹状突起
錐体細胞は海馬や大脳皮質で中心的な働きを担う大型の神経細胞であり、細胞体が少し縦長になっているためこの名 がある。この細胞体の頂点から上方向に長い樹状突起(尖端樹状突起)を伸ばしている。尖端樹状突起からはさらに多くの樹状突起が枝分かれし、先端の棘突起 にシナプスを作る。
5.シナプス可塑性
神経細胞間の接点(シナプス)での情報伝達効率が長期的に変化する能力のこと。シナプスにおいて、情報を伝達する側の神経細胞の構造物を前シナプスと呼び、情報を受容する側の神経細胞の構造物を後シナプスと呼ぶ。

fig1.jpg
図1 刺激に富む豊かな環境での集団飼育
実験では、思春期にあたる生後3週~6週のラットをケージで隔離飼育する群と、 遊具などがある豊かな環境で集団飼育する群の2群で海馬の脳波を比較した。豊かな環境では、視覚や体性感覚などの一次的な刺激に富むことの他にも、社会性 が育成されることで注目されている。最近の神経行動学では、思春期の隔離飼育は自閉症や統合失調症の実験モデルとして捉えられ始めている。
fig2 (1)
図2 海馬脳波のθ波とγ波の計測
左右の海馬CA1領域からシリコンプローブ(左図、緑色の電極)を用いて脳波活 動を計測した。シリコンプローブには50μmごとに脳波記録点が規則正しく配置され、海馬のどの部位から記録された脳波なのか正確に分かる(中央図)。海 馬CA1領域の放線状層と網状分子層では、θ波発現時にγ波が出現する(右図 γ振動)。

0211.jpg

図3 飼育環境による左右の海馬脳波の振幅および同期の変化
θ波出現時の海馬CA1領域の放線状層脳波からγ波を抽出 し、左右で比較したところ、豊かな環境で飼育したラットのγ波の振幅が全般的に大きくなり、さらに右側がより大きくなっていることが分かった(左図)。ま た、隔離飼育のγ波は、左右間であまり同期していないが、豊かな環境飼育のγ波は左右で同期している。右図は、左右脳波間の周波数毎の同期具合(コヒーレ ンス)を計算したグラフ。豊かな環境飼育群の脳では、γ周波数(30~50Hz)あたりで同期が高まっていることが分かる。
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